電力システム改革とエネルギー・ミックス

 2015年7月に電気事業法改正法が成立し、2016年4月の電力(小売)自由化に次いで、2020年に発送電事業を分離することが決まりました。電力事業やガス事業の垣根を撤廃し、強い総合エネルギー企業を作ろうというものです。また、政府はエネルギー・ミックスを閣議決定しました。さらに、CO2削減目標も策定されました。今後の電力事業政策は、電力システムの着実な推進と2030年のエネルギー・ミックスの実現を軸に展開していくことになります。電力システム改革の詳細な制度設計はこれからですが、安定した電力供給が維持できるようにすることが大事です。 同時に、改正法附則が定めるように、法的分離前に事業環境をしっかり検証することは欠かせません。エネルギー・ミックスに関しては、原子力発電をベースロードとしてしっかり位置付けること、再生エネルギーを電力料金への影響を抑えながら拡大することが重要です。

 送電会社の託送料金は総括原価方式による認可制が続きます。送電線については、いわゆる公共財のような形で、発電事業者、小売事業者に公平に送電サービスを提供することになります。電力の販売促進をモティベーションとした送電網拡充が起きにくくなるため、送電網の拡充、整備については法的分離後もしっかり行われるような制度とすることが大事です。米国は発送電分離後の送電網整備が疎かになったため、送電網の老朽化、弱体化が進み、大停電の一因になってしまいました。

 発送電分離においては、発電会社の経営環境の各段階における検証が重要です。原子力発電の問題を棚上げにしたままの法的分離では、発電会社の経営環境は極めて厳しいものとなりかねません。非活用資産や過大なリスクを負ったままでは、安定的で経済性を持った発電事業は困難です。新規参入電力が安価な電力を販売したとしても、供給力のある既存電力が経営不振に陥れば、電力料金は上がりかねません。原子力発電の事業環境整備は喫緊の課題です。

 原子力発電の事業環境整備では、原子力発電所の着実な再稼働と国策民営に沿った電力会社への適切なリスク配分が必要です。まず、原子力損害賠償法の事業責任者は有限責任にすることを検討すべきです。また、原子炉の使用期限を40年とすることについては、日本の点検整備のレベルを踏まえ科学的見地から見直しを行うべきです。 また、延長審査中に40年を経過した場合の救済措置は欠かせません。特定重大事態への対応についても、政府が基準も示していない中で、2020年までに実施するのは現実的ではありません。再稼働について、原子力規制委員会の新規基準への適合性審査に時間がかかり過ぎており、あまりにも膨大な資料要求がされています。法律に基づく行政の観点から、審査における手続保障を明確に書面で規定すべきです。また、法的根拠のない有識者会議による破砕帯評価など、原子力規制委員会の運営については設置法付則の趣旨からも見直しが必要です。原子力発電を国策民営で継続する以上、国がしっかりしたコミットメントをしていくことが欠かせません。

 エネルギー・ミックスでは、2030年に原始力発電を22~24%、再生エネルギーを26~24%(24~26%)とすることになっています。 原子力発電への依存度をできるかぎり引下げつつも、今後もベース・ロードとしていくためには、確実な再稼働とリプレースあるいは運転年数の延長が不可欠です。原子力発電所の再稼働が遅れる中で、老朽火力の更新も必要になってきています。新型石炭火力の更新については、現存老朽火力のCO2排出量との比較を電力全体で考えていくことが必要です。世界的にエネルギー価格が低迷し、海外のエネルギー民間のエネルギー開発投資が停滞している今こそ、長期的観点に立って海外のエネルギー権益の 確保に国が積極的に関与していくべきです。また、再生エネルギーの利用拡大を図るにしても、電気料金への影響を最低限に止めるための方策を考える必要があります。

 電気事業政策でもっとも大事なのは、安全を大前提に、安定供給、経済性、環境性の最適解を見つけることです。政府の取り組みを政治がしっかり監督していかなければ、電力システム改革もエネルーギー・ミックスも失敗しかねません。失敗すると困るのは電力利用者ですし、電力供給に支障が出ると国民の生命にも関わります。また、足元では、原子力発電の再稼働が進まないことによる高い化石燃料発電、固定買取価格制による太陽光発電の拡大による電力料金の高騰は、家庭用で25%、産業用で40%超と看過できないレベルに達しています。市民生活や産業活動にこれ以上悪影響がでないように足元の電力料金にもしっかり目配りしていく必要があります。