消費者契約法、特定商取引法の見直し

 2015年12月に政府審議会消費者委員会の専門部会は消費者契約法見直し特定商取引法見直しの答申を公表しました。現行の消費者契約法や特定商取引法の規定では、悪質な訪問販売や詐欺まがいの虚偽広告が後を絶たず、消費者保護のために、年間で100万件近い消費者生活相談が寄せられています。しかし、現在、議論されている規制案は、悪質業者を排除するだけではなく、健全なビジネス活動にも影響する可能性があり、事業者のコスト増は最終的には消費者の不利益にも繋がります。今の議論ではいったい何がどこまで規制されるのかが明確ではなく、具体的な行動指針を明確に示すことが重要となります。業界によっては既に自主ルールによって悪質な販売保進活動を防止しようとしている業界もあります。いかに効果的に悪質業者を排除し消費者を保護するか、各業界のビジネスの実態を踏まえた検討が必要です。

 中間の見直しでは、不招請勧誘の規制強化、勧誘要件の緩和、不当勧誘型の拡大、契約解除・取消可能期間の延長などが議論されていました。最終答申では大分、見直し項目は織り込まれましたが、まだまだ曖昧さを残しています。

 勧誘要件の緩和は、勧誘の定義を、特定人に特定の者やサービスを購入させようとする場合に加えて、不特定多数に対する場合を含めようというものです。今までは、対面販売などの直接的勧誘が対象でしたが、テレビ、ケーブル、インターネット、新聞広告、チラシなども規制の対象になります。これらの媒体で誤った情報が伝えられたり、重要な情報が告知されなかった場合には、取消の対象になります。具体的な適用範囲については解釈を明確化するとしていますが、法律の見直しではなく逐条解読で解釈を変更することは避けなければなりません。

 現在、消費者契約の取消の場合には、双方が現存利益を返還することとなっています。従って、売り手企業は販売金額の全額を返還、買い手消費者は現存する商品を返還することとなります。サプリメントを5錠買って3錠飲んでしまっていれば、残り2錠を返せば良く、テレビやパソコンを使い続けていても、使って古くなったものをそのまま返せば全額返金してもらえることになります。5年前のテレビ広告が、商品の問題点をすべて伝えていなかったからと言って、5年あるいはそれ以上たった時に、商品を返せばお金を返してもらえるというのは、いくら何でも企業にとって厳しすぎます。債権法改正の議論では、契約取消の場合に原状回復義務にしようとしていますが、消費者契約法はこの特例を残そうとしています。

 また、法律上認められた以上の解除権、解約権あるいは損害賠償額などの条項は、事業者側の有利な立場を利用した不当条項として、無効にしようという議論もされています。一体、どこで不当か否かの線を引くのか、大きな問題が残ります。 さらに、消費者裁判特例法では、適格消費者団体が最初に訴訟を起こし、不当勧誘を認められてしまうと、後から提訴された訴訟では、その判決を援用できます。そのため、一件でも負けてしまうと企業としてはそれまで販売した全品については取消、返品のリスクを抱え、損失の引き当てをせざるをえなくなります。これでは、企業は潰れるか、商品価格にリスクを転嫁するかせざるをえなくなります。

 また、消費者契約法は通則法11条によって、外交企業が日本人に通信販売をする際にも適用されます。以上のような規制については、グローバル・ビジネスの標準をはるかに超えるものとして相当いろいろな意見が出てくる可能性があります。実際、英語のインターネット・ショッピングで、商品の説明が不十分だったということで何年もたって取消のリスクがあるということになると、日本向けには通販は認めないということになりかねません。

 悪質な業者やビジネスから消費者を保護することは大事です。そのため、各ビジネスにおいて、本当に何が必要なのか、もっときめ細かく業界の声を聞き、的を絞って悪質業者やビジネスを厳しく排除する方法を考えるべきです。