ガス・システム改革と天然ガス

 2015年7月にガス事業法改正法が成立しました。ガス(小売)の全面自由化に続いて、2022年までに、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手三社は導管部門が法的分離されることになりました。電力とガスの垣根を取り払い、強い総合エネルギー企業を作ることが可能になります。詳細な制度設計はこれからですが、制度設計の進展もしっかり見守り、法的分離前にガスの事業環境をしっかり検証し、法的分離がガス事業に悪影響を及ぼさないようにすることが大事です。

 導管部門を切り離す前に、システムを変更しなければいけないという実務的な問題があります。複数のガス小売業者が新規参入してきた時に、ガスが導管をスムーズに通り、お客への課金も間違いなくなされるようにすることが大事です。制度設計が遅れると、システム変更も遅れることになりかねません。

 導管分離後のガスの保安体制も重要です。今までは、ガス会社が川上から川下まで一貫して責任を持っていましたから、保安はガス会社が全面的に責任を持っていました。(持たされていました)ガスの場合、ガス器具の安全までガス会社が見ていました。導管を分離した場合、家庭内、ガス器具の安全は導管事業者の手を離れてしまいます。家庭内、ガス器具の異常に迅速に対応できる、利用者にわかりやすい体制を作らなければいけません。特に、地震などの災害後の復旧では要員の問題もあります。ガス会社が一貫して責任を持っていた時には、ガス会社前者の人員が復旧に当たりました。しかし、導管会社を分離し、導管会社とガス会社の人事交流を遮断した場合に、現場で有機的な対応が出来るかという問題があります。ガスの保安は利用者の生命・財産の問題に直結します。

 導管網の延料金は伸をどう進めていくかという問題もあります。改正法では、ガス会社間の導管接続に関する規定はありますが、導管網の延伸については具体的にどのようにモティベーションを与えていくかはっきりしていません。改正法の付則では天然ガスの活用促進が明記されました。改正法の目的は、ガス小売事業への新規参入者が出てくることにより、競争が促進され、ガス料金を下げることにありますが、既存ガス会社から新規参入者へのサービスのスウィッチだけであれば、ガス網の拡大は望めません。日本のエネルギー政策において、天然ガスの活用を促進していくことは大事です。ガス会社がLNG基地、導管、小売を一貫して行っていた時には、全体の経営の中で、ガス導管の延伸計画を立て、需要の開拓を行っていました。しかし、導管部門だけを分離した場合には、着実な導管需要が見込めることが必要になります。天然ガスの輸入は長期契約で行われるため、需要がみとおせなければ、天然ガスの購入契約も締結できませんし、需要が見通せなければ導管延伸もできません。天然ガスをもっと活用するための枠組みを考えることが大事です。

 ガス事業のシステム改革は、市民生活に大きく影響します。従来、ガス事業は交易事業として、供給義務を果たしてきました。地域独占を認められる一方で、料金は総括原価方式による認可制とされてきました。ガス事業の自由化はガス小売への異業種からの参入を認め、ガス料金に競争を持ち込むことになります。しかし、ガス事業の公益的側面をこれから誰がどのように負っていくかについては、必ずしも明らかになりきっていません。自由化し、法的分離を求める一方で、ガス会社に公益的役割を求め続けることはビジネス的には無理があります。ガス事業という今まで一貫して行われてきた事業を法的に分離した場合に、理屈では割り切れない落ちがあっては大変です。また、法的分離の対象とならなかったガス事業者にとっても、ガス小売自由化後の業界の発展、天然ガスの活用は大きな問題です。海外からの天然ガスの輸入が円滑に行われるように、ガス田の開発に国や大手企業がしっかり取り組むことも必要です。今後の制度設計が国民の期待位に答えるものとなり、また新制度への移行が円滑に行われるように、政府と取り組みをしっかり見守っていくことが大事です。